文横だより2025年9月号

夏のある日の早朝、里山の草地でホオジロが小さめのカマキリを捕獲しているところを見かけた。
望遠カメラのファインダー越しに。
野鳥が餌を捕獲する様子を見かけることは珍しくはない。
けれども、その時はホオジロの次の行動に目を奪われた。
すぐ背後の森林の手前の樹木の中ほどの高さの枝に飛び移ったかと思うと、
そこにいたホオジロの幼鳥に餌としてカマキリを与えていたのである。
概して巣立ったばかりの幼鳥はすぐに自活はできず、しばらくは親から餌を与えられるケースが多い。
正にその実態を見せられたのであるが、もう一つ驚くことがあった。
それは幼鳥の体の大きさが親とそれほど変わらないことであった。
一体なぜであろうか。
雛が多くの天敵から身を守るために逸早く成長する必要のあることは主な要因であろう。
その一方で、成長したホオジロは枯れたススキなどの穂の上に留まれるくらいの軽さを保たなければ餌の穂にはありつけない。
また草地での落穂などの採食中は体が大きいほど天敵に見つかるリスクが高まる。
かくしてホオジロは適者生存の進化の末、生まれるとすぐに体を大きくさせ、
その成長をすぐに止める遺伝子を有することになったのであろう。もちろん推測であるが。
大きな図体をした子にせっせと親が給餌している図というのはどこかユーモラスである。
 

 
文横だより2025年 9月号をお送り致します。
 
◆9月の読書会報告
日 時:  9月 6日(土)17時〜19時
場 所: 神奈川県民センター内
テーマ: 『出家とその弟子』 倉田百三  岩波文庫他
担当者: 寺村(港)さん
出席者:(リアル)(敬称略・)
河野、篠田、佐藤、山下、中根、藤原、寺村、野田、岡井、山口、太田朝、
「掲示板」からの参加(敬称略)9/6現在
野田、藤原、成合
 
(以下、読書会担当者、寺村さんより)
この書を読むのは今回が三回目だ。一回目は高校生のときで、人に薦められて読んだが、たいして印象が残ったわけではなかった。二回目は定年退職した後のことで、このときは多くの人が抱くであろう感動を私も感じることができた。三回目は今回で、課題図書に推したあとで読み返した。
 永遠の青春の書といわれているらしい本書であるが、私には単に青春の書とは思えない。さまざまの年齢の人が、それぞれの人生にあわせて考え感じさせる、そのような書のように思われた。
 
 浄土真宗の祖・親鸞とその弟子のことが書かれているから、真宗(浄土真宗のこと、以下同様)イデオロギーの宣伝ではないかと思われる向きもあるかもしれないが、そうではない。著者の倉田百三自身、真宗教団関係者ではない。彼の宗教体験は、一燈園の西田天香からの影響がもっとも大きかったようだ。他にはキリスト教にも深く傾倒していたようである。同様に解説の亀井勝一郎も教団関係者ではない。私自身は江戸時代以来の檀家制度の続きとしての関係はあるが、それ以上ではない。
 
 まだ二十歳代だった頃、友人から「これはいいぞ」と薦められた本があった。それは「歎異抄」というタイトルで、唯円という人が著者であった。もう少し詳しくいうと、親鸞の弟子であった唯円が、師・親鸞の教えが歪められて異なった教えが伝わっていることを嘆いて記した書であった。余裕があれば、併せて『歎異抄』を読んでいただければ、本書の背景が分かり、またより深い理解を得ることができるだろう。
 本書『出家とその弟子』には重要人物として登場する唯円であるが、歴史上の唯円はただ『歎異抄』の著者として知られているだけで、それ以外のことは伝わっていない。慈円はこの戯曲では親鸞の付き人であるが、百人一首では前大僧正慈円と呼称されるほどの御偉方で天台座主であり、親鸞と同時代人ではあっても、とんでもないほどの天上の人であった。歴史上の良寛は、江戸後期の曹洞宗の僧である。
 
☆ 親鸞の思想のもっとも特徴的なところは「他力本願」ではないかと思われますが「他力本願」について、感じられるところやコメントがあればご記入ください。
(以上、文横掲示板にも会員の感想と共に掲載されています)
 
◆10月の読書会スケジュール
日 時:  10月 4日(土)17時〜19時
場 所: 神奈川県民センター内
テーマ: 『マクベス』 シェイクスピア  岩波文庫他
担当者: 野田(十河)さん
 
◆11月の読書会スケジュール
日 時:  11月 1日(土)17時〜19時
場 所: 神奈川県民センター内
テーマ: 『山椒魚』、『夜ふけと梅の花』 井伏鱒二 
両作品とも、岩波文庫『山椒魚・遙拝隊長』(短編集)、または新潮文庫『山椒魚』(短編集)のどちらにも所収されています。
担当者: 山口(山岡)さん(岡井さんは担当ご辞退)
 
◆12月の読書会スケジュール
日 時:  12月 6日(土)17時〜19時
場 所: 神奈川県民センター内
テーマ: 『緑のドア』、『改心』 オー.ヘンリー  『オー.ヘンリー傑作選』(岩波文庫)より
担当者: 中根(保坂)さん(福島さんは担当ご辞退)
 
◆1月の読書会スケジュール
日 時:  1月14日(土)17時〜19時
場 所: 神奈川県民センター内
テーマ: 『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』 近松門左衛門作  桜庭一樹 現代語訳(河出文庫)より
担当者: 篠田
担当者より:「日本のシェイクスピアとも言われる近松門左衛門は以前から扱いたかったテーマ作家。『女殺油地獄』は、各種現代語訳の本がほとんど市場に出回っていなかったのですが、桜庭一樹氏により(2016年に)現代語訳されていたものが、今年2025年2月に文庫化されて入手しやすくなりました。なお文楽、歌舞伎、映画、TVドラマ等で表現されており、それらを直接または映像ソフトで鑑賞するのもお勧め致します」
 
◆2月以降の読書会担当者
(敬称略)佐藤、小鍛冶、成合、遠藤悟、山下、鶴見、藤本、赤川、武内、太田朝、河野、藤原、寺村、野田、岡井、山口、中根、篠田(残り6名はご辞退中)
の順となります。
担当者はテーマが決まりましたら篠田までご連絡をお願い致します。
注)ご辞退、順番の変更等がありましたら、調整しますのでご連絡をお願い致します。
  また漏れや今まで辞退していたが担当ご希望の方がありましたら、ご連絡をお願い致します。
注)担当者は原則リアルにもご出席をお願い致します。
 
◆読書会テーマについて
原則としてできるだけ短編が望ましいです。
同じく本は安価で購入できることが望ましいです。
ただし上記について例外を認めない訳ではありません。
 
お問い合わせ、ご相談はお気軽に直接TELまたはメッセージでも大丈夫です。
   
連絡先 篠田まで
AD <taizo_shinoda@chic.ocn.ne.jp>
TEL  090-3146-3077
 
以上、篠田

ホオジロ   撮影 篠田泰蔵
2025/9/29